水理計算の基礎知識-18章
動水勾配とは
動水勾配とは
動水勾配とは距離と損失水頭との比で、単位長さ当たりの損失水頭のことです。
動水勾配は一般的に千分率(‰)で表します。
例えば、(図18-1)の管に、AからB方向に水が流れていて、AからBまでの距離がL(m)、管との摩擦によって失われた水頭がh(m)とします。
(図18-1)
このとき、動水勾配(I)を求める式は、
I = h / L × 1000
I:動水勾配(‰) h:損失水頭(m) L:距離(m)
となります。
では実際にこの計算式を用いて動水勾配を求めてみます(図18-2)。
(図18-2)
(図18-2)では、AからBまで5m水が流れる間に、管との摩擦によって失われる水頭が1mですので、動水勾配(I)は、
I = 1m / 5m × 1000
= 200‰
となります。
動水勾配は単位長さ当たりの損失水頭のことであり、単位長さはm(メートル)ですので、200‰というのは1m水が流れたときの損失水頭が(200 / 1000)つまり0.2mであるということになります。
ひとつ注意しなければならないことは、ここでいう損失水頭とは管との摩擦によって失われた水頭であるということです。
ですから途中に給水用具がある場合、その給水用具の損失水頭は計算に含めません(図18-3)。
(図18-3)
(図18-3)では、AからBまで5m水が流れる間に失われた水頭は2mですが、その内の1mは止水栓による損失水頭ですので、動水勾配を求めるには、
I = 1m(管の摩擦損失水頭) / 5m × 1000
= 200‰
と計算します。
さて、ここまでの説明は距離と損失水頭から動水勾配を求めるものでしたが、距離と動水勾配から損失水頭を求めることもできます。
先ほどの動水勾配を求める式を、損失水頭を求める式にすると、
I = h / L × 1000
h = L × I ÷ 1000
I:動水勾配(‰) h:損失水頭(m) L:距離(m)
となり、距離に動水勾配を掛けることによって損失水頭を求められることが分かります。
この計算式を用いて(図18-4)の損失水頭を求めてみます。
(図18-4)
A-B間の距離が15m。動水勾配は120‰です。
このとき、損失水頭hは、
h = 15m × 120 ÷ 1000
= 1.8m
となります。
再度の説明になりますが、動水勾配120‰というのは1m水が流れたときの損失水頭が(120 / 1000)つまり0.12mであるということです。
この例の場合、A-B間の距離が15mですので、15m × 0.12 = 1.8m となるわけです。
この損失水頭を求める式(h = L × I ÷ 1000)からも分かるように、動水勾配が大きくなると損失水頭も大きくなります。
動水勾配を小さくするには、流量を少なくする、あるいは管径を大きくするという方法があります。
参考までに、流量と管径の違いで動水勾配がどれぐらい変化するものなのかを表にまとめてみました(表18-1)。
動水勾配(‰)を1000で割った値が管路1m当たりの損失水頭となります。
(表18-1)流量と管径と動水勾配(参考例)
0.2 L/sec | 0.6 L/sec | 1.0 L/sec | 2.0 L/sec | |
---|---|---|---|---|
13 mm | 228 | 1613 | 4104 | 14895 |
20 mm | 33 | 220 | 546 | 1926 |
25 mm | 12 | 79 | 194 | 673 |
30 mm | 5 | 34 | 83 | 286 |
40 mm | 1 | 9 | 22 | 74 |
50 mm | 1 | 3 | 8 | 26 |