水理計算の基礎知識-9章
「居住人数」から同時使用水量を算出する
「居住人数」から同時使用水量を算出する
章題は「居住人数」から同時使用水量を算出する、と略していますが略さずに言うと、「居住人数から同時使用水量を予測する算定式を用いて同時使用水量を算出する」となります。
なお説明の都合上、今後この方法による同時使用水量の算出方法を、「居住人数」から算出する方法、というように表記します。
この算出方法は「戸数」から算出する方法と同様、集合住宅に適しています。
「戸数」から算出する方法との違いはこの章の最後で説明します。
使用する算定式は「居住人数から同時使用水量を予測する算定式」(資料5)です。
(資料5)居住人数から同時使用水量を予測する算定式
居住人数 | 算定式 |
---|---|
1~30人 | Q = 26P^0.36 |
31~200人 | Q = 13P^0.56 |
201~2000人 | Q = 6.9P^0.67 |
この「居住人数」から同時使用水量を算出する方法では、算定式に当てはめるだけで同時使用水量を算出することができます。
それではこの算定式を用いて給水装置全体の同時使用水量を求めてみます。
◆居住人数20人の場合
居住人数が20人で30人以下ですので、Q = 26P^0.36の算定式を用い、
Q = 26 × 20人^0.36
≒ 76.4 L / min
となります。
(注意事項)
計算はべき算を先に行います。乗算を先に行うと正しく計算されません。
Q = (26 × 20)^0.36 ← 誤った計算
= (520)^0.36
≒ 9.5 L / min ← 誤った結果
◆居住人数60人の場合
居住人数が60人で31人以上ですので、Q = 13P^0.56の算定式を用い、
Q = 13 × 60人^0.56
≒ 128.7 L / min
となります。
◆居住人数300人の場合
居住人数が300人で201人以上ですので、Q = 6.9P^0.67の算定式を用い、
Q = 6.9 × 300人^0.67
≒ 315.2 L / min
となります。
次に、区間ごとの流量を算出してみます。
(図9-1)の給水装置の、A~Gの各区間の流量を算出します。
(図9-1)
計算の前に各戸の居住人数を設定します。
ここでは、タイプAの居住人数を4人、タイプBの居住人数を2人としました。
居住人数の算出方法は各水道局により取り扱いが異なりますので要綱等で確認してください。
(A~B間)
A~B間の受け持つ居住人数は2人ですので、Q = 26P^0.36の算定式を用い、
Q = 26 × 2人^0.36
≒ 33.4 L / min
となります。
(B~C間)
B~C間の受け持つ居住人数は4人ですので、Q = 26P^0.36の算定式を用い、
Q = 26 × 4人^0.36
≒ 42.8 L / min
となります。
(C~D間)(D~E間)(E~F間)も同様に計算します。
(F~G間)
F~G間の受け持つ居住人数は36人ですので、算定式はQ = 13P^0.56に変わり、
Q = 13 × 36人^0.56
≒ 96.7 L / min
となります。
計算結果をまとめたものが(表9-1)です。
(表9-1)
区間 | 居住人数 | 計算式 | 区間流量 (L / min) |
---|---|---|---|
A~B | 2 | Q = 26 × 2^0.36 | 33.4 |
B~C | 4 | Q = 26 × 4^0.36 | 42.8 |
C~D | 6 | Q = 26 × 6^0.36 | 49.6 |
D~E | 12 | Q = 26 × 12^0.36 | 63.6 |
E~F | 24 | Q = 26 × 24^0.36 | 81.6 |
F~G | 36 | Q = 13 × 36^0.56 | 96.7 |
(「戸数」から算出する方法との違い)
先に述べたように、「戸数」から算出する方法と「居住人数」から算出する方法はともに集合住宅に適した方法です。
では、両者の使い分けはどのようにするのかを考えてみます。
(表9-2)は、「戸数」から同時使用水量を予測する算定式と「居住人数」から同時使用水量を予測する算定式との比較です。
(表9-2)
戸数 (戸) |
「戸数」から算出する方法 (L/min) |
居住人数 (人) |
「居住人数」から算出する方法 (L/min) |
居住人数 / 戸数 (1戸当たり居住人数) |
---|---|---|---|---|
10 | 88.9 | 31 | 88.9 | 3.1人 |
20 | 141.4 | 71 | 141.5 | 3.6人 |
30 | 185.5 | 115 | 185.3 | 3.8人 |
40 | 225.0 | 163 | 225.3 | 4.1人 |
50 | 261.3 | 227 | 261.4 | 4.5人 |
60 | 295.2 | 272 | 295.1 | 4.5人 |
70 | 327.3 | 317 | 327.0 | 4.5人 |
80 | 358.0 | 363 | 358.1 | 4.5人 |
90 | 387.3 | 408 | 387.3 | 4.5人 |
100 | 415.7 | 454 | 416.0 | 4.5人 |
戸数が10戸のとき、「戸数」から算出する方法で求めた同時使用水量は88.9L/minです。
そして、「居住人数」から算出する方法を用いた場合に、この88.9L/minとほぼ同じ同時使用水量となるのは居住人数が31人のときです。
このときの居住人数を戸数で割ると、1戸当たりの居住人数は3.1人であることがわかります。
同様にして20戸から100戸まで比較してみると、それぞれ3.6人、3.8人、4.1人、4.5人となります。
多くの水道局では水理計算の条件として、ワンルームタイプの居住人数は1~2人程度に設定して計算することと思います。
(表9-2)の比較からも分かるように、ワンルームタイプのように居住人数が少ない場合には、「戸数」から算出する方法では同時使用水量が過大になってしまいます。
このようなことから、「居住人数」から同時使用水量を算出する方法は、集合住宅のうち、ワンルームタイプのもの、あるいはワンルームタイプとファミリータイプが混在するものに、より適した方法と考えられます。
もちろん、ファミリータイプのみでもこの「居住人数」から同時使用水量を算出する方法で計算することができます。
なお、「5. 計画使用水量とは」でも述べたように、水道局によっては、建物(給水装置)の種類ごとに算出方法が明確に定められている場合もありますので、事前に水道局あるいは要綱等で確認しておく必要があります。